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2017年冬、狩猟同行日記

『巻き狩りがあるんです』と、Kさんが教えてくれたのは11月の半ばくらいの事でした。

『巻き狩り』は、大勢で獣を追い立てて仕留める猟です。

歴史として漠然と知っていましたが、普通に現在でも行うんだ、と知って、『へー、行ってみたいなあ』とだけ言いました。

 

すると数日後にKさんは、

『行けるように手配しておきました』

えっ。まだ行くとも行かないとも言ってない。。。

そして、巻き狩りに同行させてもらうことになったのでした。

 

前日から雪が降りました。

巻き狩りは、標高700~900mくらいの下仁田の山で行われるということで、軽トラにゆられてやってきました。

霧氷がびっしりキラキラと光る、いままで見たことのない、美しい世界でした。

 

 

出発前には、山の下で今回の巻き狩りについての打ち合わせが行われました。

巻き狩りは、獲物を追う『勢子(せこ)』、それを待ち構え仕留める『タツ』、

それぞれの役割が決められています。

その配置やどのように追うのかなど、話し合われていました。

 

そして山の上。ここから獲物を追ってゆくそうです。

霧氷が満開の桜の花のようでした。

 

猟犬は、ケージに入れられて一緒に職場へ出勤です。

 

配置につく、『タツ』役のハンターさん。

ワンコは、喜び勇んで走り出してゆきます。

 

『あんたら、勢子と来るかい、ここで待ってるかい?』とハンターの方。

Kさんの事前案内では、『フセさんは、待ってるだけだから』という事だったのですが、、、

 

『勢子と行きます』

なに勝手に即答してるんだ、Kさん。

 

その後の行程は、今日で人生最後かと思った。。。

 

いくつの崖をおり、沢を越え、崖をのぼったろう。。。

ひたすら、人間の道ではない、けもの道をたどって。

私、高所恐怖症で体育万年 成績2だったのに。

写真なんか、とる余裕ないです。

必死です。

 

けもの道。

ハンターのAさんは、フンや足あとなどの痕跡をみながら山を下りているようでした。

 

鹿の群れが、おどろいてその場を発ったようでした。

Aさんが、今まで鹿が寝ていたという寝床を教えてくれました。

すいません、わたし 目の前の崖に必死でした。

 

ドドドド、と地響きをたて、

目の前を十数頭の鹿の群れが駆けてゆきました。犬はワンワンと走り回ります。

『ホイホイホーイ』と声を上げながら勢子役のAさんは追い立てます。

 

遠くで銃の音が何発も聞こえました。

山の中でであう鹿の群れは、奈良公園でシカせんべいを求めておじぎをする鹿とは違い、

わたしの知らない世界の、けものなのだと感じました。

 

途中で、別の尾根から降りるよう言われました。

たぶん、あまりに鈍くさかったのでしょう。。。

 

雪野原に、撃たれた鹿が倒れていました。

ガラスのような目。

 

この日は四頭の鹿が獲れました。

番小屋へ運び、解体が行われました。

もわんとしたにおいと湯気が立ち上ります。

今まで生きていた動物が肉になってゆく様子を、初めて見ました。

 

四頭の鹿は、見る見る、おどろきの速さで解体されてゆきました。

一時間はかからなかったと思います。

 

解体に使うナイフは、スースーっとよく切れ、見とれてしまうほどです。

柄に鹿の角があしらえてあったり、それぞれの持ち物に工夫が施され、素敵でした。

 

そして、鹿のタタキを作ってもらいました!

人生初、鹿のタタキ。しかも獲れたて。おいしかったです。

残りの肉は皆で分けて、私にもくださいました。

邪魔しかしてなかったのに。。。

 

春から今まで、千頭をこえる鹿がこの辺りで捕獲されているそうです。

篠竹が群生していた山は、まるで様相を変えてしまったと、聞かせてくれました。

 

犬をつれ、獲物をとる、狩猟を見るのは初めてで、何もかもが驚きでした。

ハンターの減少や高齢化、放射能の問題、野生動物の食害、山と人とのあり方、色んなことを教えて頂きました。

 

本当にありがとうございました。

 

ちなみに2月に狩猟免許がとれる試験があるそうです。

興味ある方は挑戦してみてはどうでしょう。