トンカラは、建物が古いので、直しながら壊れてゆく箇所も多いのですが、
中でも北西の部屋は風や光が入らず、
何もかもがカビて虫に食われるという、魔窟になっていました。
ここに風と光を入れて、気持ちの良い空間に変貌させ、
自分の蔵書と、夫が無秩序に持ち込む書籍を置いて
ブックカフェスペースを作りたいというのは悲願でした。
協力してくれたのは、Koyane建設スゴーラ・アダムさん。
カナダから来て日本で大工をしているナイスガイです。
おそらく、数十年ぶりに畳がはがされ、床下が現れました。
床下から吹き上げる冷たい空気に、異界の風を感じます。
76年前から時が止まったままの地面。
少し興奮しました。
足跡つける前に写真撮ればよかったです。
怪しげな獣が出入りしてる穴とかあるし。
大引は、自然の木をはつっただけのものが使われいました。
アダムさん曰く、自然の木を使うのは腕のいい大工でないとできない。
真っ直ぐでないから、現場で合わせてゆくしかないのだそうです。
木のアーチを生かした知恵?とも思いましたが、
戦争が終わってすぐに建てられた家なので、
物資不足だったのかもしれないともいうことです。
それにしても76年を経て大引は、
こんなに太いのに、まるでうまい棒のようにスカスカです。
家がうまい棒に支えられているとしたら、大変です。
大引も束柱も、作り替えることになりました。
古い家なので、礎石は自然石です。
『ピンコロ石なら簡単だよ』と言われましたが、
『ピンコロ。。。かあ。。。』と言った私が、
よほど嫌な顔をしていたのかもしれません。
『OK!石を拾ってくるところからしましょう!』
と、アダムさん。
すごいな、そんなわがまま聞いてくれるのか。
と、いうことで、家の周りの平べったい石をみんなで拾いました。
本を置くので、束柱の間隔も狭くし、礎石の数も増やします。
アダムさんは、礎石のまわりに小石を詰めて安定させ、礎石にチョークで色をつけました。
チョークを塗った礎石に束柱をあて、束柱についたチョークの色を目安に、
のみで削ってゆくのです。
なんと。
建築士をしている友人によると、年配の大工さんでもできる人はなかなかいないそうです。
アダムさんが水平を測ってみたところ、
この八畳間だけで、南北10cm以上もの高低差がありました。
それをジャッキを使って合わせたり、調整をはかるなど、
古い家は、思ってもみなかったような大変な作業がチョイチョイ入るようです。。。
そして、束柱と大引が入ってゆきました。
木材は、長野と群馬の質の良い立派なものばかり選んでくれました。
野地板が入りました!
これだけでも、トンカラで唯一水平でユラユラしない床となっております。
断熱材、入りました!
今まで畳の下から冷たい風が吹いてきましたが、
それもサヨナラ。
この後は床貼り、と思われましたが。。。
ここでまた、古民家のための、アダムさんサービス!
ウンともスンとも動かず、
壁と化していた襖の上下を削ったり、
鴨居や敷居にカンナかけたりして、
襖が開くようになりました!
襖が!
開いた!!
夢のようだ!!
そして床板が入り始めました。
これも立派なカラマツの無垢板です。
仕上げにミツロウワックスを塗って。。。